瀬川直人さんの経歴

プロのレーシングドライバーを志す子どもたちの第一歩をサポートするプログラムを2020年度から始動し、2021年度も継続して実施しています。2021年度は昨年度サポートした瀧口純輝(たきぐち じゅんき)さんに加え、2019年の“TAKUMA KIDS KART CHALLENGE(以下、TKKC)”優勝者、瀬川直人(せがわ なおと)さんもサポート。本年度は、瀧口純輝さん・瀬川直人さんが佐藤琢磨選手と個別で相談する機会を設け、昨年よりもさらにサポート内容を強化しています。

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2021年度から新たにサポートする瀬川直人さん。2019年のTKKCにて優勝され、プロのレーシングドライバーを目指して、努力を積み重ねています。

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瀬川さんはTKKC2019での優勝に至るまでにもたくさんの練習や研究を重ねていました。レースを始めたきっかけから今回のサポートまでの経緯についても、ご本人からレポートをいただきましたのでご紹介します。

カートに初めて乗る

僕は幼いころからクルマが好きでした。SuperGTを見に岡山国際サーキットへ連れて行ってもらい、サーキットサファリのバスに乗って間近で見るGTカーの迫力を感じました。
小学1年の頃までは、ミニッツレーサーというラジコンでサーキット走行をして遊び、初めてのカートは、大阪の浜寺公園内にあるゴーカートでした。それが面白くて父親に頼んでもっとたくさん乗れる施設を探してもらい、兵庫県宝塚市の宝塚カートフィールド(以下、TKF)に連れて行ってもらいました。今考えればこのことがその後の僕のレース活動の第一歩だったと思います。
TKFへ行って数回は、初心者向けのレンタルカート(4ストロークエンジン)に乗って楽しんでいました。初心者向けのカートはある程度乗れる、とTKFの店員さんに認められ、これまでのカートよりも1つ上のクラスのカート(2ストロークエンジン)にも乗らせてもらうという、貴重な経験をしました。ちなみに、TKFは、元F1ドライバーの小林可夢偉さんが幼少期にカート活動をされていた施設です。

琢磨キッズカートチャレンジ2018を知る

初めて2ストロークエンジンのカートに乗ったのが小学2年生(2017年)でした。これがすごく楽しくて毎週のようにTKFに連れてきてもらって走行するようになりました。ここで毎月開催されているスパルコカップというレーシングイベントにも出場するようになりました。小学3年生になった時に父親が周囲の方から「小学生シミュレーター選手権」と「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」のことを聞き、僕もそれを聞いてどちらにも挑戦することに決めました。
TKKCでは、普段乗っている2ストロークエンジンのレンタルカートでなく、4ストロークエンジンのレンタルカートでの走行があること知り、その練習を始めました。この年大阪付近でTKKCに参加している奈良県生駒市にあるサーキットで練習とタイムアタックを繰り返し、何とか予選を勝ち抜くことができました。TKKC2018では、ファイナル大会の上位44名には入ったものの、上位10名が参加できるアカデミーには出場できませんでした。次のTKKC2019では、もっと上位に上がれるようにと思ってカートの練習をするようになりました。その結果、「小学生シミュレーター選手権」では西地区(西日本)で3位になりました。この年からドライビングシミュレーター(LAPS)の練習も開始しました。

琢磨キッズカートチャレンジ2019で勝つ

TKKC2018では、ファイナル大会で悔しい負け方をしたのでどういう練習をすれば勝てるか考えました。「アカデミーに進出できれば日頃TKFで乗っている2ストロークエンジンのカートでの練習成果が出せる」。そう思って2019年は、TKKCのファイナル大会のことを考えて4ストロークエンジンの練習を毎週繰り返していました。周りの選手も速かったので毎週順位の入れ替わりがあってTKKCのファイナル大会への出場が確定するのは、予選期間終了直前でした。
TKKC2019 のファイナル大会は2日間あり、初日は、全体で2番手のタイムで終えることができました。2日目は、決勝まで残ることができました。8番手でスタートし、2位でゴールすることができ、アカデミーへの進出もできました。念願のアカデミー進出を決めることができてとても嬉しかったです。
アカデミー当日はとても緊張していました。アカデミーで乗る2ストロークエンジンのカートは、レンタルの2ストロークエンジンのカートでの運転より丁寧なアクセルワークでないと速く走れない印象で、運転が難しかったです。午前中は、メインストレートでのフルブレーキの練習や、パイロンスラロームの練習で少しずつこのカートに慣れた気がしました。お昼休みの前にタイムアタックがあり、そこでは1位をとることができました。
午後は、予選を3回した後に決勝でした。この日の目標は、『安全に抜く』だったので、予選2回目で1度3位まで落ちた時も、接触をせずに安全に抜くことができた。予選3回目を1位で通過し、決勝もポールtoウィンで勝つことができ、アカデミーで優勝することができました。アカデミーで優勝できたことは本当に嬉しかったです。

TKKC2020 2連覇を目指して

2019年12月に行われたTKKC2019アカデミーで優勝した後、2020年も勝ちたいと思っていました。また、4ストロークエンジンのカートで勝つには、もっとうまくならないと2020年は勝てないと思い、カートのレース大会であるSWSジュニアに参加してうまくなろうと考えました。SWSジュニアのレースがあるのは、最も近いところで愛知県、次に千葉県のサーキットでした。
TKKC2020で勝つためには、4ストロークエンジンのカートでのレースで上位に入らないといけないので、父親と相談して、 TKKC2020の為の練習としてSWSジュニアに参戦することを決めました。2,3,4月に3戦、愛知県、千葉県でのSWSのレースに出ましたが、その後はコロナの影響でレースの予定が組めなくなり、2020年のSWSを終えることになりました。
2連覇を目指していたTKKC2020もコロナの影響で中止が決まりました。毎週のように4ストロークエンジン、2ストロークエンジンのレンタルカートでタイムアタック・練習をしていたのでとても残念でした。そこで、新たに今後の活動を考えることになりました。

SRS-K入校

TKKC2019にて優勝後、僕には次のステップを考える為の自分の実力が分からなかったので、今後の活動をどうしようか悩んでいました。三重県にあるルートワンサーキットに行った時、店長の菊地さんから解決につながる話をいただきました。それは、自分の実力が分からなければレースで実力を確かめれば良い、ということでした。菊池さんはすぐに僕が出られそうなレースを探してくれて、レース車両の準備、レース前の練習走行、そしてレース参加の準備をしてくれました。
石野サーキットで2020年末に行われるSLカデットクラスに参戦が決まったので、そこに向けて練習を開始しました。初めてのサーキットで初めての車両だったが、乗れそうな手応えを感じました。そこで前から気なっていた鈴鹿サーキットレーシングスクール・カート(SRS-K)の説明会に申し込みをしてみようと思いました。
説明会に申し込んだだけで、参加できるとは思っていなかったし、まさか佐藤琢磨校長ご本人との面接があるとは思いませんでした。少しは、面接で聞かれそうな事を考えていたつもりでしたが、面接を受けたあとは、入校は厳しいかもしれないと思うほど、手ごたえを感じることができませんでした。

面接後の石野サーキットのレースは、練習のかいがあって予選3位、決勝4位でした。レースでの厳しさを味わいましたが、少しはレース活動をやっていけるかもしれないと思いました。12月末のTKF で行われたスパルコカップでは優勝し、年間チャンピオンにもなれました。SRS-K の入校を諦めかけていた12月31日に郵送でSRS-K の合格通知が届きました。本当に嬉しかったし、父親も喜んでくれました。しかし喜んでいるだけではダメだと思いました。合格したということは、もう次の挑戦が始まったということだからです。

今度はSRS-K で1位になりたい。4月開校に向けてどんな練習ができるか考えました。日頃の練習で乗っているレンタルカートより速いカートでの練習はできないか?SRS-K で使用するカートJunior MAXで練習できないか?ネットでレンタル車両を探しましたが見つからず、三重ルートワンサーキットの菊地さんに相談しました。菊地さんは、すぐ調べてくれて数日後に、Junior MAX を準備できるとの返事をくれました。その後日程調整し2021年1月中旬に鈴鹿サーキット南コースでの練習ができることになりました。入校までに3回乗ることができました。※だいぶ時間がたってから、父親から普通はJunior MAXを貸してくれることなんてない、と聞きました。菊地さんに感謝しかありません。
SRS-K に入る方は、日頃から自分のカートでレースに出ており、日本でもトップクラスだと聞いていたので、3回乗ったくらいでどれほど戦えるか?と思いましたが練習しなければその差は少しも縮まりません。必死ではじめて乗るJunior MAX に慣れようと思いました。
できる限りの準備・練習をしてSRS-K開校の日を楽しみにしていました。
そんな中、Glicoから活動をサポートしてくださる話をいただき、プロのレーシングドライバーになる夢をさらに強く持ちました。

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