人的資本
人事に関する基本的方針
当社グループは、企業発展の源泉となる最大の資本は「人」であり、個々人の能力開発・育成を図り、意欲あふれる人財が束となって変革を推し進めること、またそうした変革を推進する人財が次々と育つ企業風土を醸成することが重要であると考えております。さらに、多種多様な社会課題の解決のために、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)にも真摯に取り組んでおります。適切な配置や機会の提供を通じて、様々な個性を持つ社員一人ひとりが自身の能力や経験を発揮できる環境を整えることがイノベーションを生み出し、意思決定の高度化につながると考えております。こうした考え方に基づいて社会から支持、信頼、尊敬される企業であることを通じ、当社グループの持続的な発展と社員の幸福の実現を目指しております。
理念体系と組織・人財のあるべき姿
当社グループでは、長期経営構想の策定にあたり、理念体系を見直し、存在意義(パーパス)「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を最上位に位置づけました。あわせて、ありたい会社の姿(ビジョン)として、「Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより、『おいしさと健康』を価値として提供し続けます。」と定めました。
また、パーパスやビジョンを実現する組織・人財のあるべき姿として、「顧客起点で価値を共創するイノベーターズ」と定義し、「イノベーターズ」を構成する全社員が備えるべき要素として、当社グループにおける不変の行動指針である「Glico七訓」を基盤に、以下の5つの要素を定めました。
■5つの要素
| オーナーシップマインド | 創業の精神を拠り所に、目的を達成するまで自律的に考動(※1)する |
| 顧客志向 | お客様の毎日に必要とされるため、価値創造サイクル(※2)を継続する |
| グロースマインドセット | 事業の発展に向けて、自身に限界を設けず、日々前進する |
| 変化対応力 | 世の中の動向から機会とリスクを鋭敏に察知し、変化に先回りする |
| グローバルマインドセット | 多様性を認識し受け入れて、判断・意思決定を行い、実行する |
※2.すこやかな毎日に寄与する新たな価値を定義、創造、伝達する継続的な活動
人的資本戦略(人財育成方針及び社内環境整備について)
理念体系の見直し以降、社員がパーパス・ビジョンに共感できるよう努めており、2025年に実施した社員向けのアンケート調査では「パーパスを理解している」との回答が84%に及びました。一方で、パーパスの実現に向けて新たな価値を創造・創出するためには、全社員がパーパスに共鳴し、成果につながる行動・思考様式を身につけ、実践することが求められます。
そこで、中期経営計画では、事業戦略・研究戦略と連動し、それらを支える基盤として「人的資本戦略」を策定し、従来から注力してきた人財育成に加え、戦略実現に向けた人財ポートフォリオの強化を中心に「個の強化」に取り組んでいます。さらに、社員一人ひとりの内側から湧き起こる「この仕事に取り組みたい」「この取り組みを通じて成長したい」と感じ、行動する気持ち(内発的動機)を原動力に、期待される行動・思考様式に基づいて能力・スキルを発揮し、個の力を「組織力へ転換」し成果を上げるための環境の整備も進めています。
1)事業戦略・研究戦略の実現に向けた「個の強化」
事業戦略・研究戦略の着実な実行には、必要な機能・役割の明確化と専門性の定義を踏まえ、組織能力を「質」と「量」の両面から戦略的に強化することが求められます。この考え方に基づき、当社グループでは、「研究部門」に人的資本投資を集中すると同時に、「経営幹部・リーダーポジション」「ハイポテンシャル人財」2領域で人的資本の強化を行い、計画的かつ継続的な育成・配置、人財の獲得を通じて、持続的な成長と競争力の強化を図っています。
「研究部門」の強化では、研究員の仕事の進め方を見直すとともに、役割に応じて専門性を発揮し、成果を最大化できる組織構築に取り組んでいます。
「経営幹部・リーダーポジション」については、後継者候補となる次世代人財を計画的に特定・育成し、人財プールの充実を進めています。
今後は、「ハイポテンシャル人財」の定義と育成に向けた社員データの分析、全社員を対象としたタレントレビューを通じて、戦略的な人財育成・配置を推進してまいります。
2)強化された個の力を「組織力に転換」するための環境づくり
当社グループの社員は、「食品による国民の体位向上」という創業者・江崎利一の強い願いを起源とする創業の精神やパーパスに共感して入社し、それを働く動機として共鳴し、日々の業務に取り組んでいます。こうした内発的動機を原動力に新たな価値を創造・創出し、成果に繋げるためには、「自律性」「自己効力感」の向上及び「相互尊重と協同関係」の確保が重要であると考えております。<br>
■自律性の向上
当社グループが考えるイノベーターとは、マーケティング部門や研究開発部門など、特定の部署に所属する専門家だけを指すものではありません。社員一人ひとりが、慣れ親しんだ環境に安住することなく、価値の創造や生産性の向上に向けて自律的に考え、行動することが、内発的動機をさらに高め、成長を促進すると考えております。
こうした自律的な思考や行動を支える基盤として、当社は社員のキャリア自律を重視し、全社員を対象に「個人別育成計画(Individual Development Plan)」(以下、IDP)を導入しています。IDPは、社員がキャリア目標や成長課題を明確にし、計画的に学びと経験を積み重ねるための基盤です。社員一人ひとりが、上司の支援を得ながら、役割・職種ごとに定義される専門性・スキル(スキルステージ)を踏まえてIDPを作成、自身の成長課題を把握し、キャリア申告や社内公募制度、民間ボランティア派遣制度などの仕組みを活用しながら、自律的に成長できる環境を整備しています。
また、当社は 2021 年より商品開発の進行・意思決定プロセスを刷新し、パーパス実現に向けた価値創造商品の期待水準について社員の理解を揃えてまいりました。しかし、価値創造品の上市につながる企画立案においては、質・量ともに不足していました。そこで 2026 年には、事業部門を対象に「価値創造強化プログラム」を導入し、実践的に企画・立案の『型』の定着を図る計画です。
■自己効力感の向上
当社グループでは、慣れ親しんだ業務領域や安定した環境にとどまることなく、事業の発展に向けて困難な課題に取り組み、獲得した成功体験、苦難を乗り越えた経験、そこで培われた自信が、社員の成長実感や前向きな姿勢につながると考えています。
当社グループでは、長期経営構想の実現に向けて、まず明確な目的意識を共有し、次に仕事と成果の再定義を行い、それらを部門目標に反映させ、目標管理制度を通じて社員一人ひとりの個人目標まで落とし込んでいます。
また、全社員が「顧客起点で価値を共創するイノベーターズ」として成果を上げるため、前項で示した5つの要素を踏まえ、今後は具体的な行動基準を定め、人財開発に活用する計画です。
さらに、5つの要素を伸ばしつつ社員の力を組織力へと転換するために、管理職に求められる期待役割・行動を定義しました。2025年には期待役割・行動に基づく360度評価を導入するとともに、実践につなげるためのワークショップを実施しています。
慣れ親しんだ業務領域や安定した環境にとどまらず、困難な課題に取り組む姿勢の醸成には、社会人生活の最初の 3 年間の体験が影響すると考えています。こうした考えに基づき、2026 年には新卒入社 3 年目までの育成プログラムの見直しを計画しています。
■相互尊重と協同関係の確保
新たな価値の創出や生産性の向上は、一部の部門や個人の力だけで推進できるものではありません。当社グループでは、a.全ての社員がパーパスに共鳴し、自ら考え、実践する集団となり、b.性別・年齢・国籍・文化・価値観などの違いを認識し、相互に尊重し合う関係を築くことで、多様な視座・視点を活かした意思決定や判断の質を高める環境づくりを進めています。
a. 当社グループでは、2月11日の創立記念日を記念して、毎年創立記念式典を開催しております。2025年の式典では、パーパスに共鳴し、具体的な行動を起こした社員による事例発表を行い、参加者がその発表から得た気づきを自職場で行動につなげることを目的に、職場ワークショップも実施しました。
b. また、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をイノベーションの実現や意思決定の高度化、組織力の強化につながる重要施策と位置づけ、ジェンダー平等、育児支援、障がい者雇用など、多様な人財が力を発揮できる環境整備を進めています。2019年に発足した「Co育て(こそだて)PROJECT」では、子どもの出生後6カ月以内に1カ月間の有給休暇取得を必須とする「Co育てMonth」制度を導入しました。対象社員が1カ月不在となる間は同僚社員が業務をカバーし合い、職場全体で育児と仕事の両立を支える仕組みとしています。障がい者雇用においては、大阪市西淀川区の本社敷地内に「スマイルファクトリー」を設置し、これまで外部委託していた業務を内製化することで、障がいのある方が、やりがいを持って働き、自身の役割や貢献を実感できる職場づくりを進めています。
こうした取り組みの成果として、当連結会計年度では、当社及び国内連結子会社の男性育児休業取得率は98.7%、障がい者雇用率は法定雇用率を上回る3.35%を達成しています。
人財育成投資及び健康経営の基盤
1) 人財育成投資
当社及び国内連結子会社では、人財育成を重要な経営投資と位置づけ、次世代の経営幹部やリーダー候補を対象とした選抜型リーダーシップ研修、次世代イノベーター育成研修、デザイン思考ワークショップ、デジタルスキル研修、民間ボランティア制度への人財派遣など、積極的に育成機会の拡充を進めています。その結果、2025年の研修費用総額は324百万円、一人あたりでは91千円となりました。
2026年にはビジネスアーキテクトスキルやプロジェクトマネジメントスキルを強化するためのプログラムの導入を計画しており、今後も社員一人ひとりの成長を支える環境づくりを通じて、組織全体の持続的な成長を目指してまいります。
2) 健康経営の基盤
企業が持続的に成長・発展し、事業を通じて社会に貢献し続けるためには、社員一人ひとりが心身ともに健康で、働きがいを持っていきいきと業務に取り組むことが不可欠です。
当社グループでは、2023年から産業保健体制の拡充・整備に取り組んでおり、社内の専門家が社員に寄り添った専門的な予防・保健活動を推進しています。この取り組みにより、二次検査受診勧奨や健康診断後の事後措置、休復職者支援の強化を進めてきました。その結果、当社の二次検査受診率は92.4%に達し(2021年度実績:26.7%) 、ストレスチェックの総合健康リスク値も継続的に改善し、2025年には82と、平均値100を下回る良好な結果となっています。
2025年には、社員の生活習慣病予防や健康意識向上を目的に、産業医と保健師、商品開発担当者が協同して、当社製品のSUNAO(スナオ)冷凍パスタを活用した社内セミナーを開催、血糖値上昇の仕組みや改善に繋がる食生活の見直し方を指導しました。その結果、セミナーを受講した419名の社員の内、88%に生活習慣の予防や健康に対する意識、行動に前向きな変化が見られました。
2026年1月、就業規則に「労働時間内の禁煙」を追記しました。これにより、喫煙習慣のない家族や他の社員、取引先の方々への二次喫煙・三次喫煙のリスクを減らすとともに、社員が健康で長く働ける環境にします。
こうした取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人ホワイト500」に2021年から5年連続で認定されました。

