「廃棄」を「資源」に変えるリサイクルループで、食品ロス削減を目指そう!

ご存じでしょうか。10月は「食品ロス削減月間」です。

みなさまは「食品ロス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実は今、日本では年間約612万トン(推計/平成29年)もの「本当は食べられるのに捨てられてしまう食品」が存在しています。(消費者庁調べ)

この廃棄量は、日本に暮らすすべての人が毎日お茶碗1杯分の食べ物を捨てているのと同じ量。こうした食品ロスを減らすために、国は毎年10月「食品ロス削減月間」に指定しています。

そこで今回は、グリコマニュファクチャリングジャパン株式会社神戸工場に所属する枝廣(えだひろ)さんに「食品ロスを減らすために取り組んでいること」について聞いてきました。

お馴染みの「ビスコ」をはじめ、「ポッキー」や「プリッツ」などさまざまな商品を製造する神戸工場では、どのような食品ロス削減活動が行われているのか、インタビューしていきたいと思います。

捨てるはずだった「廃棄」のお菓子を、飼料という「資源」へ。

グリコマニュファクチャリングジャパン株式会社神戸工場 枝廣さん

――枝廣さん、今日はよろしくお願いします。

枝廣さん:神戸工場でファクトリーイノベーション推進課に所属している枝廣です。主に工場設備の維持・管理や環境ISO事務局、工場内で発生した廃棄物の管理を担当しています。今日はよろしくお願いします。

――さっそくですが、食品ロスに関する神戸工場の取り組みを教えてください!

枝廣さん:Glicoの工場すべてに共通していることですが、私たちは毎日「可能な限り廃棄を出さないこと」を目標に製品をつくっています。毎月しっかりと廃棄量を管理し、どうすれば減らせるかを常に考えていますが、やはりどうしても廃棄物は発生してしまいます。割れてしまった、規格外になってしまったなどのいわゆるB級品ですね。これらはアウトレット品として販売したり、フードバンクに提供して福祉の施設などに寄付させていただいたりしています。

――普段からしっかりと、食品ロスを減らす活動をされているのですね。

枝廣さん:そうですね。そして、販売や寄付などもできない廃棄物に関しては、飼料や肥料として再利用しています。そのひとつが「豚さんのご飯」ですね。

――豚さんですか!

枝廣さん:神戸工場では、廃棄物となってしまったビスコを工場内で粉砕し、豚さんの餌として飼料会社に提供しています。そして、その飼料を食べて育った豚さんの一部を私たちが買い付け、神戸工場の食堂や隣接する保育園「こどもぴあ」の給食メニューとして出しているんですよ。

――飼料にすることで廃棄を減らすという目的は達成していると思いますが、育った豚さんを自分たちで食べることにまでこだわっているのは何故ですか?

枝廣さん:廃棄が減ればそれだけで食品ロス削減につながりますが、私たちはその一歩先である「廃棄を減らし、循環までできる仕組みづくり」に着目しているからです。廃棄物を活かして新たな資源や食品を生み出し、それを再びGlicoが活用する。そうした「リサイクルループ」を実現することで、食品ロスはもちろん、さまざまな環境問題に対する意識を社内全体で高めたいと考えています。

――そうだったのですね!ちなみに、枝廣さんは実際に豚さんを食べられたことがありますか?

枝廣さん:もちろん!とてもやわらかな肉質でおいしかったですよ。これまでにトンカツ、冷しゃぶ、生姜焼きなどさまざまなメニューが登場していますが、私はトンカツがいちばん好きですね。他の社員もよくおいしそうに食べていますよ。実際においしくいただくことで意識の変化もありますし、いいことだと感じています。

廃棄は、新しい資源や価値を生みだす種になる。

――廃棄物は、植物を育てる際に用いる「肥料」にもなると話されていましたが、どのような使い道があるのでしょうか。

枝廣さん:チョコレート菓子をつくるときに発生するカカオの皮は、発酵すると肥料として再利用できるんですよ。神戸工場では廃棄物として発生したカカオの皮を肥料会社さんへ提供し、肥料化してもらっています。その肥料を使って農家のみなさんが農作物を育てて……そんな循環の仕組みがあります。

――私たちが普段食べている野菜も、もしかするとカカオの皮を肥料にしているかもしれませんね。

枝廣さん:そうですね。ちなみに、このカカオの皮を使ってできた肥料もGlicoが一部買い取り、「グリコピア」や「こどもぴあ」の緑地を育てるために使用したり、園内で子どもたちが育てている家庭菜園に提供したりしています。これもひとつのリサイクルループですね。こうした取り組みが評価され、2020年には第14回キッズデザイン賞も受賞しているんですよ。

――廃棄という言葉には「いらないもの」「捨てるもの」というイメージがありましたが、枝廣さんのお話を聞いていると「新しい価値を生み出す種」のようだなと感じます。

枝廣さん:ありがとうございます。私たちは、工場内で発生する食品ロスはもちろん、すべての廃棄量を減らせるようさまざまな活動をしています。例えば、砂糖などが入った「原料袋」もリサイクルループをしているんですよ。

――原料袋は、リサイクルが難しい素材だと聞いたことがあります。

枝廣さん:よくご存じですね!その通り、原料袋は内側が防湿加工されており、リサイクルが難しい素材でできていたので、以前は使い終わった原料袋を燃料として活用していました。でも、それだと燃やして終わり。循環しないんですね。そこで、新たな中間処理業者と契約し、製紙工場と協力して使用済み原料袋をダンボールの原料として再利用できるようにしたんです。現在、神戸工場では原料袋から新たに生まれたダンボールを一部使用しています。

――原料袋をリサイクルできるよう、根本から改善をされたのですね!どうして、そこまでの取り組みをされるのでしょうか?

枝廣さん:食品ロスをはじめ、今、地球はさまざまな問題を抱えています。私たちのような企業が廃棄を減らすことは、結果的に地球環境を守ることにもつながると考えているからです。

SDGsという、持続可能な社会の実現に向けて世界中で取り組んでいる目標のひとつに「つくる責任 つかう責任」がありますが、私たちが取り組んでいることはまさにこの分野。全国の食品ロスを減らすためにも、今日話したようなリサイクルループの仕組みをどんどん増やしていきたいですね。

最近は、アップサイクルという「捨てられるはずだった廃棄物に別の価値をプラスし、新たな商品を生み出す」という仕組みにも注目が集まっています。ぜひGlicoでも、アップサイクルな挑戦をしたいと考えています。

「リサイクルループ」が当たり前の社会を目指して。

――今日はたくさんのお話をありがとうございました!最後に、この記事を読んでくださっているみなさまにメッセージをお願いします。

枝廣さん:みなさま、最後まで読んでくださってありがとうございました。ここでお伝えしたように、Glicoでは食品ロスを減らす取り組みをはじめ、それらを再利用して新たな資源や食品へと循環させる仕組みづくりまで大切にしています。こうした仕組みを、もっと広く社会へ普及していきたいですね。

また、より多くの子どもたちが環境問題に目を向けるきっかけを届けられるよう、神戸工場では定期的に環境教育のイベントを開催しています。一人でも多くの方が食品ロスについて考えるようになれば、世界は大きく変わるはず。そんな思いを抱いて、これからも環境取り組みをコツコツと継続していきます。