元青年海外協力隊員が推進した、ガーナにおける新型コロナ対策支援の取り組み!

ガーナにおける新型コロナ対策支援の取り組み

2020年7月、江崎グリコのチョコレート製品の主原料・カカオ豆の主要生産国である、ガーナ共和国において、新型コロナウイルス感染症に関連する支援を実施しました。本プロジェクトを推進したのはJICA民間連携派遣制度を活用し、青年海外協力隊員として、ガーナで1年間ボランティア活動をした経験を持つ、コーポレートコミュニケーション部の高橋さんです。今回、高橋さんに取り組みに至った背景や想いについてお聞きしました。

>>本プロジェクトの詳細はコチラ

ガーナにおける新型コロナウイルスの影響は?

新型コロナウイルス感染者は世界中で増え続けており、私が昨年まで1年間滞在していたガーナにおいても、2020年7月30日時点で、約3万5000人の陽性者が出ています。
ガーナは、医療体制や生活インフラが十分に整っていないため、新型コロナウイルスの被害が日本よりも深刻ではないかと気になり、ガーナに滞在している知人に現状を伺いました。すると、人口が多く、交通量も多い都市部では、マスクや消毒液は販売されているが、外出禁止令が発令されたことによる影響で、収入が減少したり、職を失ったりして、経済的に困窮している人たちが多くいるとのことでした。

一方で、地方部では、マスクや消毒液などの衛生用品がほとんど販売されておらず、医療機関もそれらの物資を十分に確保できないという状況で、感染症対策が十分に取れていないとのことでした。

そこで、当社のチョコレート事業と関係の深いガーナに対して、今だからこそできることをしたいと考え、都市部と地方部の状況を踏まえ、それぞれに対し異なるアプローチで支援取り組みを実施しました。

都市部での取り組みは?

ガーナの首都アクラでの支援を、株式会社DOYAとNPO法人Dooooooooとの3者共同で実施しました。DOYA社は、ガーナにおいて障がい者やシングルマザーを雇用し、アパレル製品等の製造を行っており、日本では「CLOUDY」というアパレルブランドを展開されています。DOYA社とDooooooooの担当の方とは、ガーナでのボランティア経験を通じて知り合いました。新型コロナウイルスの影響により、困窮しているガーナの人々のためにできることをしたいという思いから、今回の共同企画に繋がりました。

私たちは、DOYA社がアパレル製品製造のために雇用している障がい者やシングルマザーに、ガーナの伝統的な布を使用したマスク 1,000 枚を発注しました。これにより、現地における就労機会の提供に繋がります。さらに、マスク購入代金の一部は Doooooooo が実施している「BEAT THE COVID-19 PROJECT in Ghana」というプロジェクトに充てられ、ガーナ首都アクラ近郊にあるアグボグブロシー地区で約 1,000 名分のマスクや温かい食事を配布することができました。

アグボグブロシー地区で食事とマスクを受け取った女の子

アグボグブロシー地区で食事とマスクを受け取った女の子

アグボグブロシー地区で食事とマスクを配布する様子

アグボグブロシー地区で食事とマスクを配布する様子

>なぜ、アグボグブロシー地区を選んだのでしょうか?

アグボグブロシー地区は、西アフリカ最大のスラム街の1つと言われています。日々、食事を十分にとることができない人が多く住んでおり、新型コロナウイルスの被害が深刻な地域の1つです。彼らに温かい食事と障がい者やシングルマザーが作ってくれた手作りマスクを提供することで、新型コロナウイルス感染予防の一助となるだけでなく、笑顔も届けることができたら嬉しいです。

>>「BEAT THE COVID-19 PROJECT in Ghana」の様子はコチラ

地方での取り組みは?

株式会社立花商店と共同で、Assin Fosu(アシンフォソ)地区という当社のカカオ豆の生産地域に対して、感染症予防対策と衛生環境改善取り組みを行いました。立花商店は、大阪府に拠点を置くカカオ・チョコレート商社で、当社のガーナ産カカオ豆の購入に関わっている商社です。支援を行ったアシンフォソ地区は、水道などのインフラ整備が不十分であるために、手洗いや洗濯などの日常生活に清潔な水を使うことができていませんでした。また、都市部から距離が離れているため、マスクや消毒液などの衛生用品がほとんど販売されておらず、同地区のカカオ農家だけでなく、医療機関(診療所)にも十分なマスクや消毒液がない状態で、感染症予防対策が十分にとれていない状況でした。
そこで、井戸採掘による清潔な水の確保(衛生環境の改善)と診療所への医療用物資の提供、さらに同地区のカカオ農家に布マスクと石鹸を提供し、感染症予防に繋がるような支援を行いました。

首都から運んだ医療用物資を配布する様子1

首都から運んだ医療用物資を配布する様子1

首都から運んだ医療用物資を配布する様子2

首都から運んだ医療用物資を配布する様子2

>井戸採掘は未だ完了していないとのことですが、何か問題が生じたのでしょうか?

井戸を採掘する際には重機が必要です。しかし、同地区の採掘予定場所に行く道は舗装されていないため、雨が降るとぬかるみが酷く、重機が通れなくなり、採掘開始まで当初の予定から2週間以上遅れてしまいました。途上国では道路など生活インフラが整備されていないため、想定外の事態が生じて、スケジュールが遅れてしまうことは良くあります。企画していた際に、スケジュールは遅れるだろうなと考えていたので、悪い予感が当たってしまいました…

重機で井戸採掘を開始した様子

重機で井戸採掘を開始した様子

>なぜ、マスクや消毒液は地方部では販売されていなかったのでしょうか?

医療用物資や石鹸は都市部には在庫がありました。しかし、流通網がしっかりと整備されていないこともあり、地方まで物資が行き届いていませんでした。そこで、都市部にある使い捨てマスクや消毒液、石鹸を買い取り、立花商店と連携して、自力で地方部の医療機関まで運ぶことにしました。多くの方々の協力で整備されていない道を数時間車で走り、アシンフォソ地区の10カ所の診療所に届けることができました。また、現地で布マスクを製作してもらい、配布することは、新型コロナウイルス感染拡大の予防だけでなく、現地の雇用機会の提供に繋がると考え、同地区のテイラーが製作した布マスクを当社が買い取り、カカオ農家に配布しました。現地のテイラーはマスク作りのノウハウをもっていなかった為、現地に在住する立花商店の方を通じて、マスクの型紙を提供したり、スマートフォンで作り方の動画を見せたりするなどして、布マスクの製作技術の指導も行いました。

配布したマスクを着用するアシンフォソ地区の住民

配布したマスクを着用するアシンフォソ地区の住民

配布した布マスクをつけた子供たち

配布した布マスクをつけた子供たち

みんなが笑顔になる活動を!

今回のプロジェクトは、社内での提案から支援の実施までにかかった期間が2~3か月と、スピーディーに実行することができたと思います。検討を始めた4月頃は、ガーナのほとんどの人々がマスクをしていませんでした。しかし、感染が拡大していくにつれて政府がマスク着用を推進するようになり、8月現在では、都市部の半数ぐらいの人が着用していると聞いています。また、カカオ農家に配布したマスクについては、新型コロナ感染予防に留まらず、日々の農作業における農薬散布の際にも活用してもらえればと考えています。今回の支援について、現地のカカオ農家だけでなく、その地域に暮らす部族の族長や子供たちからもたくさんの感謝の言葉を頂きました。

また、診療所からは、ガーナ政府からの支援物資が足りていなかったことから、助かったという声を頂き、支援を実施して良かったと強く思いました。ガーナのカカオ農家らは、チョコレート事業を展開する当社にとって、重要なパートナーであると考えています。今後も現地のニーズに応じて定期的な支援を行うことで、共に持続可能な社会を創っていきたいと考えています。