同じペースなのに心拍数が下がるのはなぜ?持久力とコンディションの見極め方

パフォーマンスに関わる栄養・休息のススメ

ランナーやサイクリストなどの間では、スマートウォッチやウェアラブルデバイスで心拍数を計測することが日常的になりました。心拍数は、運動の激しさ(強度)を簡単に評価できる有用な指標です。では、日々の数値を追うことで、一体どんな変化に気づくことができるのでしょうか。

同じペースで心拍数が下がる理由は?

日々熱心にトレーニングを続ける人の中には、「以前と同じペースで走っているのに、心拍数が低くなった」「同じ心拍数で漕いでいるのに、ワットが高くなった」と気づくタイミングがあるはずです。これは、多くの場合、全身持久力やパフォーマンスが向上していることを示すサインです。では、なぜこのような変化が起きるのでしょうか?

その主な理由は、心臓が1回の拍動で送り出せる血液量が増加したことによります。日々のトレーニングで心臓が鍛えられ、1回の拍動でより多くの酸素を筋肉へ届けられるようになるため、回数に頼る度合いが軽減するのです。

もう少し説明します。全身に送り出される血液の総量(心拍出量)は、次の関係式で成り立っています。

心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数

同じペースで運動しているとき、筋肉へ供給すべき血液の総量は大きく変わりません。そのため、1回拍出量が大きくなると、式にあるもう一方の心拍数を減らしても、これまでと同じ量の血液を供給できるようになります。これが、同じペースでも心拍数が下がるメカニズムです。

心拍数を評価する際の注意点

一方で、心拍数の見方にはいくつか注意すべきポイントがあります。

1つ目は、心拍数が下がっているけれど、「キツい」「身体が重い」と感じる場合です。これは体力が上がったのではなく、疲労が抜けきっていないことが疑われます。身体が心拍数を上げたくても上げられない状態になっていて、オーバートレーニングの手前であるオーバーリーチングという状態に陥っている可能性もあります。

こちらも、もう少し説明します。一般に、「疲れていると心拍数が高くなる」と言われます。しかし、疲れの種類によっては普段より心拍数が低くなる場合があるのです。そのため、心拍数だけでなく、主観的な感覚を考慮することで評価の精度が上がります。つまり、「数値(客観)」と「きつさ(主観)」をセットで照らし合わせることで、パフォーマンス向上なのか、疲労の蓄積なのかをより妥当に見極められるようになります。

2つ目は、季節による影響です。特に暑い時期は、体温を下げるために皮膚へより多くの血液を送る必要があり、心拍数が高まりやすいです。そのため、涼しい室内でのトレーニングは別としても、夏季は心拍数で成長度合いを評価するのが難しい場合もあります。

表 普段・過去と比較した際のパフォーマンス・コンディション評価

普段・過去との比較 感覚 評価・状態
同じペースなのに心拍数が低い
同じ心拍数なのにペースが速い
楽~普通 パフォーマンス向上の可能性
同じペースなのに心拍数が低い
同じ心拍数なのにペースが速い
キツい・重い 疲労蓄積(オーバーリーチング)の可能性
暑い+同じペースなのに心拍数が高い
暑い+同じ心拍数なのにペースが遅い
キツい・暑い 暑熱環境(夏場など)による影響

持久力向上のための過負荷、休養、栄養

赤パプリカ

同じペースで心拍数を下げる(=パフォーマンス向上)ためには、日々のトレーニングよる適切な過負荷と、十分な睡眠に代表される休養のサイクルを繰り返し、身体に適応を引き起こすことが大切です。

加えて、近年では、特定の栄養素を摂取することの可能性も議論されています。その1つが、赤パプリカに含まれる色素成分「パプリカキサントフィル」です。

赤いパプリカの抗酸化成分『パプリカキサントフィル』を活用しよう

関西大学の研究グループが2025年に発表した研究(※1)では、健康な大学生21名が検証に参加しました。1ヶ月間パプリカキサントフィル(9mg)を飲む期間と、飲まない期間をランダムな順番で全員に体験してもらい、それぞれの前後でエアロバイクを漕ぐテストを実施しています。その結果、同じワットを漕いだ場合であっても、キサントフィルを飲んだ条件では心拍数が低い値を示しました。

パプリカキサントフィル摂取が定常負荷運動中の心拍数に及ぼす影響

図 パプリカキサントフィル摂取が定常負荷運動中の心拍数に及ぼす影響

対象者:健康な大学生21名(男性18名、女性3名)
摂取条件:パプリカキサントフィルを1ヶ月間摂取(摂取しない対照条件と比較したクロスオーバー試験)
運動内容:エアロバイク(自転車エルゴメーター)を用いた30分間の連続運動
運動強度:換気性閾値の80%の強度(両条件ともに、事前のテストで設定した全く同じ物理的負荷=ワット数で実施)
結果:全ての評価タイミングにおいて、パプリカキサントフィル摂取条件の方が心拍数の上昇が有意に抑えられた。
データの見方:グラフのプロットは平均値を示し、エラーバーは標準偏差を表している。(図の視認性を考慮し、エラーバーはそれぞれ上方向または下方向にのみ表示)
出典:Kim & Wadazumi (2025) のデータをもとに作成

この結果について研究者らは、パプリカキサントフィルの持つ抗酸化作用が、酸素を運ぶ赤血球を柔軟に保つように働きかけたのではないかと推測しています。つまり、筋肉へ酸素を届ける運搬効率が高まったことで、心拍数を抑えながら運動を続けられるようになったのではないかという見解です。

この研究は一般大学生を対象としたものであり、日々ハードなトレーニングを積む持久系スポーツ愛好家やアスリートにそのまま当てはまるとは限りません。しかし、酸素の運びやすさに着目した栄養学的アプローチがパフォーマンスに好影響を与える可能性は、持久力を高めたい人にとって興味深い知見です。

まとめ

心拍数は、パフォーマンスに関するヒントをくれる指標です。そして、パフォーマンス向上の基本は、適切なトレーニングによる過負荷と、睡眠などの十分な休養です。それを前提とした上で、例えば酸素の運搬に着目したような栄養学的なアプローチを選択肢として知っておくことも、パフォーマンス向上の可能性を広げるきっかけになります。

心拍数は、ペースやワット、主観的なキツさ、栄養などなど、他の要素と組み合わせて多角的に捉えることで、今の自分やパフォーマンス向上の可能性を知る強力なツールへと変わります。日々の数値から得られるサインを読み解くことが出来れば、トレーニングをより豊かにしてくれるはずです。


※1. Kim, D., & Wadazumi, T. (2025). Effects of Paprika Xanthophyll Intake on Endurance and Cognitive Function in College Students: A Crossover Randomized Controlled Trial. Nutrients, 17(17), 2780. https://doi.org/10.3390/nu17172780

髙山 史徳(たかやま ふみのり)/博士(体育科学)・株式会社ユーフォリア
ランナーを中心に多くの持久系アスリートをサポート。HRV(心拍変動)などの客観的指標と主観的な体調データに基づくコンディションの最適化や、筋力トレーニング指導に精通。持久系スポーツ領域における研究論文を多数執筆。
フルマラソン自己ベスト:2時間46分

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