ゾーン2トレーニングとは?効果・やり方・注意点を最新研究から解説

パフォーマンスに関わる栄養・休息のススメ

近年、ランニングやサイクリングをはじめとする持久系スポーツの分野で、「ゾーン2トレーニング」が注目を集めています。持久力向上や脂肪利用能力の改善への期待から、多くのアスリートが取り入れていますが、実は「誰にとっても最適なトレーニング」とは言い切れません。
本記事では最新研究をもとに、ゾーン2の効果と限界、そして一般ランナーにとっての最適な活用法を解説します。

ゾーン2は息が上がりやすいゾーン3以上に比べて強度が低いのが特徴です。そのため、普段息の上がるトレーニングをしている人の中には、「低い強度でトレーニングをした方が良いのかな?」と思うかもしれません。しかし、この流行の裏には、多くの人が見落としがちなポイントが潜んでいます。

今回は、ゾーン2のトレーニングを説明するとともに、パフォーマンス向上を目的として日々トレーニングに励む人たちへ向けて、持久系トレーニングの本質に迫ります。

「ゾーン2」とは何か?

トレーニングの強度について、5つの段階(ゾーン)に分けた際、下から2番目に位置するのがゾーン2です(※1)。

表 トレーニングゾーンの分類

ゾーン %最大心拍数 血中乳酸濃度 感覚の目安
ゾーン5 92-100% > 6 mmol/L 話せない
ゾーン4 87-92% 4-9 mmol/L 1単語なら話せる
ゾーン3 82-87% 1.5-3.5 mmol/L 短い文なら話せる
ゾーン2 67-82% 1-2 mmol/L 多少の努力を要するが、会話は可能
ゾーン1 55-72% < 1.5 mmol/L 非常に楽

※1・2を参考に作成。実際の数値は個人のフィットネスレベルや測定環境による。

専門的に言うと、ゾーン2は「第1の乳酸性・換気性閾値の直下の低強度」と定義されており、目安として、以下のようになります。

・最大心拍数の67-82%程度
・血中乳酸濃度が1-2 mmol/L程度で安定している状態
・多少の努力を要するが、会話は可能

ゾーン2トレーニングはミトコンドリア強化に最適なのか?

SNSなどでよく見かけるのが、「ゾーン2こそがミトコンドリアの機能や脂肪燃焼能力を向上させる最適な(あるいは唯一の)強度である」という主張です。もちろん、ゾーン2のトレーニングによって、このようなトレーニング効果は期待できます。ただ、持久系スポーツの研究者たちは、こうした適応の多くはゾーン2特有のものではなく、他のゾーンのトレーニングによっても十分に引き起こされると言及しています(※2)

エリート選手のゾーン2トレーニングは一般ランナーにも有効?

「エリート選手はゾーン2でのトレーニングを多く実施している」という見解も、流行の根底にあります。確かに、驚くほどの時間をゾーン2に費やしているエリート選手はいます。ただ、ここで見落としがちなのが、前提として、彼らは週当たりのトレーニング時間が膨大という事実です。 このトレーニング量の絶対的な大きさを考慮せずに、持久系スポーツの愛好家が、そのまま真似しようとすると、次に示す2つの大きなハードルが存在します。

1. 競技による「身体へのダメージ」の違い

そもそも、近年のゾーン2トレーニングの流行は、サイクリング(自転車競技)やトライアスロンの分野を中心に広まってきたという背景があります。実際、ゾーン2トレーニングの効果を引き出す好ましいトレーニングの1つとして、専門家たちは「2時間を超えるような持続的なセッション」を推奨しています(※2)。サドルの上で体重を支え、着地衝撃がないサイクリングであれば、このような長時間の低強度トレーニングは比較的容易に実践できます。

しかし、このアプローチをランニングに直接当てはめようとすると問題が生じます。ランニングにおいて2時間を超えるようなセッションを頻繁に行えば、筋肉や関節への物理的なダメージ(着地衝撃)が過剰に蓄積し、怪我のリスクが跳ね上がってしまうと考えられるからです。

2.「時間的制約」の違い

エリート選手は、時に週20時間以上もの圧倒的なトレーニング量をこなしています。一方で、仕事や家事などと両立しながらトレーニングに励む持久系スポーツ愛好家の中で、このような多量のトレーニングをこなしている人はほとんどいません。限られた時間でしかトレーニングをしていない人が過度にゾーン3以上のトレーニングを避けることは、持久系パフォーマンスの向上を果たすために、必ずしも効率的とは言えないのです。

トレーニングの本質は「無理なく負荷を最大化すること」

トレーニングの本質は「無理なく負荷を最大化すること」

パフォーマンスを向上させるための持久系トレーニングの本質は、「特定のゾーンに固執すること」ではなく、自身の置かれた環境を考慮した上で、「無理なく負荷を最大化すること」にあります。ここで、注目して欲しいこととして、トレーニングの負荷は、以下のように表すことができます。

負荷(Load)= 量(Volume)× 強度(Intensity)

量をたっぷりと確保でき、怪我のリスクをコントロールできる人にとって、ゾーン2でのトレーニングを主として負荷を積み上げるアプローチは好ましい選択です。しかし、時間的制約があり、量を獲得しにくい人が負荷を最大化しようと思えば、強度をある程度求めた方が効率的です。実際、息の上がる高強度のトレーニングは心肺機能を著しく向上させることが示されています(※3)。高強度を適切に実施することは多くのケースで重要なのです。

では、具体的にどんなメニューを組めばよいのでしょうか。例えば、「週4回・合計3〜4時間」のランニングを行う場合、次の表のようにメリハリをつけるのがおすすめです。

表 「週4回・合計3〜4時間」のランニングトレーニング(例)

曜日 ゾーン 時間、意味合い等
1 30分、軽いジョグ
4-5 45分(ウォームアップ含む)、息の上がるペースでのインターバル
1-3 30分、ゾーン1から10分ずつ、ゾーン2・3まで強度を高めるビルドアップ
2 90 -120分、ゾーン2を長時間維持する

このように、時間がとれやすい休日はゾーン2で量を稼ぎつつ、平日はゾーン3以上で「強度」を求める。こういった組み合わせこそが、多くの持久系スポーツ愛好家にとって効率的に負荷を最大化するアプローチとなります。

ゾーン2でのトレーニングをすること自体は、多くの恩恵をもたらす有効なアプローチです。しかし、SNS等で流行っているからといって、とにもかくにもゾーン2の時間や割合に固執することは、多くの人にとって最善とは限らないでしょう。

大切なのは、自分自身のライフスタイルに合わせて量と強度を適切に組み合わせ、無理なく負荷を最大化すること。それこそが、持久系トレーニングの本質です。

※1 Sitko, S., Artetxe, X., Bonnevie-Svendsen, M., Galán-Rioja, M. Á., Gallo, G., Grappe, F., Leo, P., Mateo, M., Mujika, I., Sanders, D., Seiler, S., Zabala, M., Valenzuela, P. L., & Viribay, A. (2025). What Is “Zone 2 Training”?: Experts’ Viewpoint on Definition, Training Methods, and Expected Adaptations. International journal of sports physiology and performance, 20(11), 1614–1617.
https://doi.org/10.1123/ijspp.2024-0303

※2 Storoschuk, K. L., Moran-MacDonald, A., Gibala, M. J., & Gurd, B. J. (2025). Much Ado About Zone 2: A Narrative Review Assessing the Efficacy of Zone 2 Training for Improving Mitochondrial Capacity and Cardiorespiratory Fitness in the General Population. Sports medicine (Auckland, N.Z.), 55(7), 1611–1624.
https://doi.org/10.1007/s40279-025-02261-y

※3 Inglis, E. C., Iannetta, D., Rasica, L., Mackie, M. Z., Keir, D. A., Macinnis, M. J., & Murias, J. M. (2024). Heavy-, Severe-, and Extreme-, but Not Moderate-Intensity Exercise Increase V̇o 2max and Thresholds after 6 wk of Training. Medicine and science in sports and exercise, 56(7), 1307–1316.
https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000003406

髙山 史徳(たかやま ふみのり)/博士(体育科学)・株式会社ユーフォリア
ランナーを中心に多くの持久系アスリートをサポート。HRV(心拍変動)などの客観的指標と主観的な体調データに基づくコンディションの最適化や、筋力トレーニング指導に精通。持久系スポーツ領域における研究論文を多数執筆。
フルマラソン自己ベスト:2時間46分

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