スポーツドリンクでお腹がチャポチャポする原因とは?浸透圧と糖質補給の科学

パフォーマンスに関わる栄養・休息のススメ

「スポーツドリンクをとると、お腹がチャポチャポして動けない」――。
運動中・後の補給で選手を悩ませるのが、お腹のチャポチャポ感やお腹への負担です。たとえ水分・栄養補給の重要性を理解していても、摂取した糖質が胃の中に溜まったままではエネルギーとして有効活用できず、むしろ高いパフォーマンスを発揮するうえで足を引っ張ってしまいます。
今回は、「なぜお腹に溜まってしまうのか」から入り、糖質補給の可能性に迫っていきます。

吸収されるのは胃ではなく小腸

摂取した水分や糖質は、胃ではほとんど吸収されず、その先の小腸に届いて初めて吸収されます。つまり、胃はあくまでも吸収するための通過点です。 そして、摂取したものが胃の中にとどまる時間が長いほど、運動中の腹部に不快感が生まれる可能性がでてきます。

この胃を通過するスピード(胃排出速度)に関係する要因として挙げられるのが浸透圧です。浸透圧とは、「液体の中に溶けている粒子の濃さ(水分を引き寄せる力)」のことです。私たちの体内(体液)には一定の基準となる濃さがあり、口にする飲み物の浸透圧が体液と比べて高いか低いかによって、胃の動きが変わります。

一般的に、砂糖やブドウ糖がたくさん入ったドリンクは、体液よりも濃度が高いため、胃から小腸へ送り出す際にブレーキがかかってしまい、胃に長くとどまります(高浸透圧)。一方、体液よりも浸透圧を抑えたドリンクの場合、胃を刺激しないため、スッと小腸へ流れ落ちていきます(低浸透圧)。

高エネルギーと低浸透圧を両立するクラスターデキストリン®

「お腹がチャポチャポせず、十分なエネルギーを補給したい」という課題を解決し得るのが、高度分岐環状デキストリン(Highly Branched Cyclic Dextrin:クラスターデキストリン®)です。

一般的なスポーツドリンクによく使われる「果糖ぶどう糖液糖」などの糖質は、含有量を増やすと浸透圧が高くなってしまいます。さらに、汗で失われるミネラル(電解質)を補おうと追加すると、より浸透圧が上がり、胃から小腸への移動が遅れてしまう原因になります。

そこで活用されるのがデキストリンです。デキストリンは、ブドウ糖が2000個近く結合した巨大な1つの分子です。液体の浸透圧は水に溶けている分子の数で決まるため、巨大な分子を使うことで、たくさんの糖質を溶かしても浸透圧があまり上がりません。

デキストリンの中でも、特に低浸透圧のドリンクに適しているのがクラスターデキストリン®です。クラスターデキストリン®は分子量が大きい上、水に溶かしたときの安定性が高いという特徴を備えています。この特徴によって、エネルギー源となる糖質を十分に配合しながらも、胃への過度な負担をさける低浸透圧を保つことができます。

研究で示されたお腹への負担とパフォーマンスへの好影響

クラスターデキストリン®のお腹への負担の小ささやパフォーマンス向上については、研究データでも示されています。

男性7名を対象とした実験(※1)では、10%濃度のクラスターデキストリン®飲料、一般的なデキストリン飲料、ブドウ糖飲料、そして水を摂取した際の胃の動きや腹部の不快感を比較しました。その結果、クラスターデキストリン®飲料は水と同等レベルで胃を通過するスピードが速く、ブドウ糖や一般的なデキストリンに比べて、その後のサイクリング運動中のゲップの回数やお腹の張りが抑えられていました。

また、競技レベルの高い男性競泳選手7名を対象とした研究(※2)では、クラスターデキストリン®飲料、ブドウ糖飲料、または水を摂取してインターバル運動を行った後、高強度運動で疲労困憊になるまでの時間を評価しました。その結果、ブドウ糖飲料(平均283.7秒)や水だけを摂った条件(平均309.4秒)に比べ、クラスターデキストリン®飲料を摂った条件(平均504.4秒)では運動継続時間が大幅に延長しました。

これらの研究結果を踏まえると、クラスターデキストリン®飲料は水だけの補給やスポーツドリンクが抱えがちな課題(エネルギー不足や胃への滞留)をクリアし、身体への負担を抑えながら高いパフォーマンスを発揮することに貢献することが考えられます。

クラスターデキストリン®の特性が活きる2つの具体例

「エネルギーを素早く身体へ届ける」というクラスターデキストリン®の特性は、お腹への負担を避けたいシーンで特に真価を発揮します。ここでは、具体例として、2つの場面を上げます。

1.エリートマラソンランナー&サイクリスト(運動中の多量糖質補給)

近年、持久系スポーツに関する研究の世界では1時間当たり90gを超えるような超多量な糖質(Ultra-High Carbohydrate)の補給戦略が注目を集めています(※3)。糖質を補給するメリットとしては、脂質よりも糖質をエネルギー源として優先的に使うことで、同じエネルギーを産生するのに必要な酸素摂取量が少なく済み、運動効率を高められることなどがあげられます。しかし、実際のレースでは、胃腸トラブルへの恐れや補給物の重さから、1時間当たり60gにすら到達できていないランナーがほとんどです(※4)。

表1は、スペシャルドリンクが活用できるエリートマラソンランナーに向けた補給計画モデルです。クラスターデキストリン®飲料を5kmごとに飲み、レース中盤の20km地点で糖質ジェルも摂取する設計です。

表1 エリートマラソン向け補給計画モデル

地点 補給内容 糖質量の目安
5km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
10km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
15km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
20km クラスターデキストリン®飲料(200ml)+糖質ジェル 47g(17g+30g)
25km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
30km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
35km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g
40km クラスターデキストリン®飲料(200ml) 17g

※クラスターデキストリン®飲料(200ml)規定濃度500mlあたり炭水化物42.5gに基づき、1回200ml当たり糖質17.0gとして計算。20km地点は糖質ジェル30.0gを加算

そして、この補給パターンを、トップマラソンランナーに当てはめて1時間当たりの換算値として整理したのが表2です。

表2 トップマラソンランナーの1時間当たりの換算データ

カテゴリ タイム(平均ペース) 水分摂取量 糖質量
男子 2時間05分(2分58秒/km) 約770ml/h 約80g/h
女子 2時間20分(3分19秒/km) 約690ml/h 約70g/h

見ての通り、クラスターデキストリン®が含まれたドリンクをフル活用することで、1時間当たり60gを超える糖質と十分な水分をとることが現実的になります。

2.格闘技選手(計量後の水分・エネルギー補給)

総合格闘技(MMA)やプロボクシング、キックボクシングなどのプロ格闘技では、試合前日に公式計量が行われます。この際、多くの選手は数週間前からのカロリー制限に加え、直前には水分を一時的に減らす急速減量(水抜き)によって、短時間で著しく体重を落として計量に臨みます。

この場合、身体は激しい脱水状態にあるだけでなく、グリコーゲンという形で筋肉や肝臓に蓄えられている糖質もほぼ枯渇状態にあります。高強度の動きを繰り返す試合までに、水分とグリコーゲンを十分に回復させる必要がありますが、減量で弱っている胃腸に濃いドリンクや重い固形物をいきなり投入すると、胃もたれや消化不良を起こしてリカバリーに失敗してしまうリスクが高まります。

計量直後のリカバリーにおいて、クラスターデキストリン®飲料などのハイポトニックドリンクであれば、胃腸への過度な負担を避けながら、水分と糖質を素早く補給することにつながります。

まとめ

水分補給をする女性

運動中のハイパフォーマンス発揮であっても、計量後の急速リカバリーであっても、共通して重要なのは「お腹に負担をかけずに水分・栄養を身体に届けること」です。補給する量だけに囚われず、仕組み(浸透圧)にも目を向けることが、胃腸トラブルを防ぎ、狙い通りの栄養補給を成功させる鍵となります。


※1. Takii, H., Kometani, T., Nishimura, T., Kuriki, T., & Fushiki, T. (2004). A sports drink based on highly branched cyclic dextrin generates few gastrointestinal disorders in untrained men during bicycle exercise. Food Science and Technology Research, 10(4), 428-431. https://doi.org/10.3136/fstr.10.428

※2. Shiraki, T., Kometani, T., Yoshitani, K., Takata, H., & Nomura, T. (2015). Evaluation of exercise performance with the intake of highly branched cyclic dextrin in athletes. Food Science and Technology Research, 21(3), 499-502. https://doi.org/10.3136/fstr.21.499

※3. Plews, D. J., Booth, P. D., Krieger, T., & Maunder, E. (2026). Fuelled or Fooled? Examining the Evidence and Mechanisms Behind Ultra-High Carbohydrate Intake in Endurance Athletes. Sports Medicine. https://doi.org/10.1007/s40279-026-02462-z

※4. Jiménez-Alfageme, R., Garrone, F. P., Rodriguez-Sanchez, N., Romero-García, D., Sospedra, I., Giménez-Monzó, D., Ayala-Guzmán, C. I., & Martínez-Sanz, J. M. (2025). Nutritional Intake and Timing of Marathon Runners: Influence of Athlete’s Characteristics and Fueling Practices on Finishing Time. Sports Medicine – Open, 11(1), 26. https://doi.org/10.1186/s40798-024-00801-w

髙山 史徳(たかやま ふみのり)/博士(体育科学)・株式会社ユーフォリア
ランナーを中心に多くの持久系アスリートをサポート。HRV(心拍変動)などの客観的指標と主観的な体調データに基づくコンディションの最適化や、筋力トレーニング指導に精通。持久系スポーツ領域における研究論文を多数執筆。
フルマラソン自己ベスト:2時間46分

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