はじめよう「抗酸化」

COLUMN 専門家学ぶ!
スペシャルコラム

 髙倉 伸幸先生
01

ゴースト血管
酸化のサイン

大阪大学微生物病研究所 情報伝達分野 教授・医学博士 髙倉 伸幸先生

 私たちの体では、心臓から酸素を含んだ血液が動脈を通って全身を巡り、また静脈を通って心臓へと戻ってきます。ここまではみなさん、よくご存じですよね。実は、この動脈と静脈の間にある毛細血管は髪の毛の20分の1くらいの細さで、血管全体の95%を占めています。毛細血管は体の隅々まで酸素や栄養を届けて、不要になった二酸化炭素や老廃物を回収する血管で、この毛細血管が私たちの健康維持に非常に大切なのです。しかし、毛細血管をよく見てみると、血管の形はあっても血液が十分に流れていかない血管がある場合があります。私はこれを「ゴースト血管」と名づけました。
 ゴースト血管によって血流が途絶えてしまうと、肌の老化や冷え、内臓機能の低下など、様々な不調を引き起こします。加齢関連疾患に繋がってしまう場合もあります。そして、血管のゴースト化の要因として見逃せないのが「酸化」なのです。
 血管の外側を覆っている壁細胞は、酸化の原因である活性酸素に弱く、壁が剝がれて酸素や栄養分が漏れやすくなった血管では血流が途絶えてしまいます。ゴースト血管の発生です。
毛細血管の状態を知ることは、自分の体の酸化度合いを知ること。爪の付け根を専用スコープで見ると毛細血管の状態を知ることができますので、機会があれば試してみてください。そして、万病の元ともなりえるゴースト血管が増えるのを防ぐためには、酸化につながる生活習慣を見直したり、食生活に抗酸化食材を取り入れたりすることが有効です。

※毛細血管スコープの体験できる場所は、あっと株式会社/ AT Healthcareが提供する「血管ナビ」でも検索することができます。詳しくはhttps://kekkan-bijin.jp/products/navi(外部サイト)

井上 浩義先生
02

アーモンド抗酸化パワー

慶應義塾大学 医学部・化学教室 教授・理学博士・医学博士 井上 浩義先生

 紫外線やストレス、乱れた生活習慣などで蓄積していく活性酸素。私たちのカラダには、活性酸素を除去する酵素によって、酸化ダメージを防ぐ仕組みが元々備わっているのですが、この「抗酸化能力」は、残念ながら40代以降で急降下してしまうことが分かっています。
 だからこそ意識したいのが、食事を通して抗酸化作用のある栄養や成分を取り入れること。中でもビタミンEは、抗酸化作用を持つ代表的な栄養素です。ビタミンEは油に溶ける「脂溶性ビタミン」なので、油でできている細胞膜を通過しやすく、細胞の内部に届きやすいという特徴もあります。私たちの細胞にある脂質の代わりにビタミンE自らが酸化することで酸化の連鎖を食い止めてくれる、頼もしいビタミンなのです。実際に、ビタミンEの摂取で、紫外線による活性酸素を抑えてくれるという実験結果もあるんですよ。
 そして、このビタミンEが多く含まれているのが「アーモンド」です。その量は、なんとゴマの約300倍(※)。ただし、食品から摂取する栄養素は、元々体内に存在する酵素とは異なり、消費されたり排出されたりしてしまうので、毎日続けて摂取することがポイントです。1日23~25粒を目安に食べるのが良いでしょう。硬いアーモンドの粒をたくさん食べ続けるのは大変だという方は、より手軽に取り入れやすいアーモンドミルクの活用もおすすめです。細かく粉砕することによって効率的に摂取することができます。
(※)日本標準成分表2020年版(八訂)より。

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伊賀瀬 道也先生
03

「血管力」
セルフチェックしよう!

愛媛大学医学部付属病院
抗加齢・予防医療センター
センター長・医学博士 伊賀瀬 道也先生

 私が所属しているのは「抗加齢・予防医療センター」。抗加齢、つまりはアンチエイジングですね。昨今では「健康寿命」という言葉が注目されることも増えました。当センターでは、血管年齢や脳年齢などを含む抗加齢ドックを提供していますが、健康寿命を伸ばすためのキーワードのひとつが「血管力」だと考えています。
 興味深いことに、血管力と深く関係しているのが脚力です。脚力(歩いたり立ち上がったりする力)は自立した日常生活を送り続ける上でも必要不可欠ですが、我々の抗加齢ドックのデータを解析したところ、血管力が低い人は、脚力が弱い傾向にあると分かったのです。血管力と脚力は親密に関連しているので、ともに鍛えることが大切です。どちらか一方ではいけません。
 ここで、血管力の簡単なセルフチェックとして、全身の血管の大部分を占める毛細血管の状態を知る方法をひとつ。その名も「指つまみテスト」です。爪先を強くつまむと、圧迫された爪は一瞬白くなりますよね。つまんでいた爪を解放して2秒くらいで赤みが戻ってくれば、毛細血管は元気そうだと言えます。
血管力を高めるには、下半身の筋肉を動かして毛細血管の血流を良くすることに加え、活性酸素による血管のダメージを防ぐ抗酸化食材を摂ることがおすすめです。また私は、脚力を高める方法としてウォーキングの他、「ゆるジャンプ」を推奨しています。抗酸化を意識することは、運動によって発生する活性酸素への対策にもなります。

岸本 良美先生
04

ポリフェノール チカラ
血管すこやかに

摂南大学 農学部 食品栄養学科 准教授 岸本 良美先生

 「ポリフェノール」という成分を知っていますか。植物の葉や果皮、種子などに多く存在していて、さまざまな食品に含まれている成分です。
 日本人の死因の約1/4は、心疾患や脳血管疾患。「動脈硬化」はそれらの疾患を引き起こす血管の病変ですが、ポリフェノールは、動脈硬化の予防に役立つと期待されています。これは、ポリフェノールが血管にダメージを与える活性酸素を除去する「抗酸化作用」を持つためです。実際に私たちが行った研究でも、ポリフェノールの摂取量が多い人たちは、少ない人たちと比べて心血管疾患による死亡リスクが低いという結果が示されました。ポリフェノールの摂取量と血管系の疾患との関連性は海外でも多く報告されています。
 ポリフェノールは、具体的にどんな食材から摂られているのでしょう。国内の異なる集団に対してこれまで行った調査では、いずれも飲料からの摂取が多い結果となりました。ただその内訳は、中高年男性が多いグループではコーヒー、お茶の産地である静岡県での調査では緑茶、大学生のグループではコーヒーや緑茶の割合は少なくなるなど、嗜好や地域による差が大きく、季節変動もあるのが特徴です。一方海外では野菜、果物からのポリフェノール摂取が日本と比べると多く、ナッツ類、チョコレートも摂取源の上位となっています。色の濃い野菜はカロテノイドの摂取源にもなり、彩りを豊かにしてくれるのでぜひ毎食取りいれたいです。果物やナッツ類、高カカオのチョコレートなどを、お茶やコーヒーとともに間食に取り入れるのもおすすめです。多様な食品を活用することで、ポリフェノール以外にも、カロテノイドやビタミンC、Eなど、抗酸化に役立つ成分を体に取り入れることに繋がります。