
パフォーマンスに関わる栄養・休息のススメ

こちらは「ランニングパフォーマンス向上のためのフィットネス疲労理論」と連動した『応用編』です。
基本編で触れたように、フィットネス疲労理論は、「いつ、どれくらいの負荷をかければ、どのタイミングで効果が表れるのか」をパフォーマンスの波として示してくれます。そんなハイパフォーマンスへの道しるべとなるパワープロダクションアプリは、ランナーにとって心強い相棒ですが、もちろん完全無欠ではありません。
「アプリ上のカーブは右肩上がりで、パフォーマンスは絶好調のはず。なのに、なぜか最近思うように走れない…」
トレーニングに熱心でアプリを積極的に活用している方なら、理論の推定と実際の走りが一致しないと感じて、少し戸惑うこともあるでしょう。そんなとき、アプリが使えないと決めつけてしまうのはもったいないことです。なぜなら、そのズレを感じた時にこそ、あなたのランニングへの見識がもう一段階深まるチャンスだからです。
では、ズレを感じたとき、どうしたら良いのでしょうか?まずは自分の体調と生活に目を向けてみましょう。具体的には、睡眠の量と質は十分に取れているか、仕事や家庭などトレーニング以外のストレスは高まっていないか、エネルギー源となる糖質や身体を作るタンパク質、酸素を運ぶヘモグロビンの材料である鉄は足りているのかといった視点です。
また、アスリートコンディションチェックを活用し、現状を見える化するのも有効です。これは、質問に答えるだけで、栄養・睡眠の状態を点数化でき、自身のコンディションの課題を把握して改善のヒントを得られるツールです。パワープロダクションアプリを使用することで「運動」も入れた3つのバランスを見ることができます。

GarminユーザーならHRV(※1)や安静時心拍数(※2)、睡眠時間といった客観的なデータも、体調を読み取る助けになります。
理論上のパフォーマンスと現実とのギャップがある時、その原因はトレーニング以外にあることが少なくありません。まずは身体と生活の土台を整えることを優先する。その丁寧な過程こそが、ズレを埋めていくために有効なアプローチです。
また、アプリが示す長期的なパフォーマンスの波とは別に、日々のパフォーマンスは異なる視点でチェックするのも有効です。例えば、「同じくらいの心拍数で走った時のペース(ペースが速いほどパフォーマンスが高い)」や、「同じくらいのペースで走った際の心拍数(心拍数が低いほどパフォーマンスが高い)」です。コースなどの条件をできるだけ揃えて比べることで、アプリが示すパフォーマンスの波と、実際のパフォーマンスが連動しているかを確認することができます。
こういった日々のパフォーマンスはGarminのデータを活用することもできます。パフォーマンスコンディション(※3)は、走り始めてしばらくすると表示されるその日の調子の目安で、基準に対して今がプラス寄りかマイナス寄りかを示します。「今日は調子が良い/悪い」という当日判断に向いた情報です。
一方、VO2 max(※4)はより中長期のパフォーマンスを表しており、数週〜数カ月のトレンドで眺めるのが基本です。どちらも万能ではありませんが、パワープロダクションアプリのパフォーマンスの波と照らし合わせながら数値を読み解くと、ズレをより客観的に把握できるようになります。
| パフォーマンス | VO2 max | パフォーマンスコンディション | |
|---|---|---|---|
| 役割・目的 | 練習の負荷に対するパフォーマンスの波を示す | 心肺持久力を推定する | 練習序盤における当日の調子をリアルタイムで評価する |
| 反映時間軸 | 数週~数カ月 | 週~月 | 分~時間(当日) |
ここでのパフォーマンスとは、フィットネス疲労理論に基づくものを指します。
ここでのVO2 maxとは、Garminのスマートウォッチやアプリ上で表示されるものを指します。
ここでのパフォーマンスコンディションとは、Garminのスマートウォッチ上で表示されるものを指します。
繰り返しになりますが、フィットネス疲労理論によるパフォーマンス推定は、ランナーにとって心強い相棒ですが、絶対的な予言者ではありません。だからこそ、アプリが示すパフォーマンスの波を参考にしながらも、日々のズレに気づき、自分の身体と生活、そして他のデータとも照らし合わせてみる。
アプリの数字に一喜一憂するのではなく、アプリとの対話を通して、自分自身の身体の声に深く耳を澄ませる。そんな付き合い方が、ハイパフォーマンスへの近道であり、あなたのランニングライフをより豊かに、そして奥深いものにしてくれるでしょう。
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※1 HRV(心拍変動):心拍のゆらぎを数値化したもの。一般的に、数値が低いと疲労やストレス、体調不良などが影響している可能性を示唆します。
※2 安静時心拍数:安静時(睡眠時)の心拍数。いつもより高めに推移しているときは、疲労や体調の乱れがあるかもしれません。
※3 パフォーマンスコンディション:Garminのスマートウォッチでランニングの序盤に表示されるその日の調子を表す指標。その人の普段に対してプラス/マイナスで示されます。プラス寄り=今日は調子が良い、マイナス寄り=無理は禁物、といった当日判断に活用できます。
※4 VO2 max:走力の目安。Garminのランニングでは主にペースと心拍のデータから推定されます。
髙山 史徳(たかやま ふみのり)/博士(体育科学)・株式会社ユーフォリア
ランナーを中心に多くの持久系アスリートをサポート。HRV(心拍変動)などの客観的指標と主観的な体調データに基づくコンディションの最適化や、筋力トレーニング指導に精通。持久系スポーツ領域における研究論文を多数執筆。
フルマラソン自己ベスト:2時間46分
