抗酸化・抗糖化の両面から老化にアプローチ~世界のエビデンスが示すアーモンドの健康効果~

世界の研究によって、健康維持に貢献するエビデンス(医学的根拠)が集積しているナッツ類。なかでもアーモンドは、オレイン酸やビタミンE、食物繊維など、コレステロールの増加や、老化の原因となる酸化、糖化のリスクを抑える成分を豊富に含む要注目の食品だ。自らもナッツを毎日とることを習慣にしているという東海大学医学部の川田浩志教授に、日経BP総研メディカル・ヘルス ラボの藤井省吾所長が、多岐にわたるアーモンドの最新エビデンスについて聞いた。

※本記事は2020年12月14日『日経Gooday』にて広告掲載されたものです。

「ナッツは食べ過ぎ注意」の認識はもう古い

【藤井省吾所長(以下、藤井)】:川田先生は、ナッツ摂取を推奨され、ご自身も毎日ナッツをとっていらっしゃるそうですね。数ある食品のなかでも川田先生がナッツに注目されたのは、どのような理由からでしょうか。

【川田浩志教授(以下、川田)】:少し遡りますが、1970年ごろから地中海沿岸地域の伝統的な食事スタイルである「地中海食」が心臓病による死亡リスクを下げることが報告され、世界の研究者が注目するようになりました。地中海食とは、野菜や果物、ナッツや全粒穀物、オリーブオイル、魚介や豆類などを主体とした食事法で、近年に至るまで数多くのエビデンス(科学的根拠)が集まっています。

 この食事法の大切な要素であるナッツについて、注目すべき研究成果が2013年に報告されました。世界で最も権威ある医学雑誌の一つである「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」において、約300万人を対象にした大規模追跡調査で「ひと握りのナッツ摂取(1日28g以上、週2回以上)で死亡リスクが13%低減する可能性がある」と発表されたのです。疾患別にみると心疾患、呼吸器疾患等の死亡リスクを有意に低下させることが分かりました[1]。

【藤井】:そのようなエビデンスがあるにもかかわらず、ナッツには「脂質が多いから食べ過ぎてはいけない」というマイナスのイメージを抱くなど、まだ誤解している方が多いようですね。

【川田】:おっしゃるとおりです。ナッツをつまんでいると「太るからやめたほうがいい」と言われたりもします。大学で講義の感想を学生たちからもらうと、「ナッツが健康にいいというのが意外だった」「親に教えたらびっくりしていた」といったコメントが多いので、ナッツの健康効果についてもっと広く知られるべき、と考えています。ナッツは脂質が多いから太る、生活習慣病になる、といった認識は改めるべきです。

米国の約12万人の肥満ではない男女を対象に、様々な食品の1日あたりの摂取量の増加と4年間の体重変化の関係を分析した。ナッツは、野菜や果物、全粒穀物、ヨーグルトと同様に体重減少に関係していた。(データ:N Engl J Med. 2011 Jun 23;364(25):2392-404.)

【川田】:例えば、食べた食品と体重変化を4年間追跡した大規模調査からは、ナッツは、野菜や果物、全粒穀物やヨーグルトと同等のダイエット効果があることが分かっています(上記グラフ)。

【藤井】:食べ過ぎ注意ではなく、ナッツはむしろ積極的に食べるべき食品なのですね。

アーモンドの健康効果のカギを握る成分は?

【藤井】:ナッツの中でも、アーモンドには、地中海食の健康効果のカギを握る成分である「良質な油」であるオレイン酸や、抗酸化ビタミンともいわれるビタミンE、また、日本人がもっととるべきとされる食物繊維が豊富です。

【川田】:オレイン酸は、不飽和脂肪酸という脂質の一種で、悪玉(LDL)コレステロールを低下させる一方で、善玉(HDL)コレステロールは低下させない、良質な脂質です。食事にアーモンドを加えることは、脂質異常症をコントロールするために推奨できる安全かつ実用的な栄養戦略になると多くの研究結果から考えられます[2、3]。例えば、糖尿病患者さんにアーモンドを食べてもらったところ、それまで少し高めだったLDLコレステロール値が改善したという研究結果などがあります。

20人の2型糖尿病患者を対象に、1日56gのアーモンドを4週間食べた場合と、食べなかった場合とでLDLコレステロールの変化を比較したところ、高めだったLDLコレステロールがナッツを食べた後では有意に低下していた。上の図では、対象者のLDLコレステロールの平均値を表示している。

【川田】:また、ビタミンEは、優れた抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンで、体を酸化ストレス(さびつき)から守ります。食物繊維は満腹感を高め、肥満の予防にもなります。私も昼食時にナッツをとっていますが、腹持ちが良いので食べ過ぎや間食を無理なく抑えられます。

さらに、アーモンドには抗酸化作用を持つプロアントシアニジンやフラボノイドなどのポリフェノールをはじめとするファイトケミカル(植物由来の化学物質の総称)も多く含まれています。このファイトケミカルによる抗酸化作用も、その健康維持効果に貢献していると考えられます。現在、私はアーモンドに含まれているポリフェノールの医学的な効果に着目して研究を行っています。

【藤井】:オレイン酸やビタミンE、食物繊維、ファイトケミカルをアーモンドという食品で満遍なくとる。その総合的な働きによって様々な健康増進効果が期待できるわけですね。

抗酸化、抗糖化の両面から老化に歯止め

【藤井】:酸化ストレス、というキーワードが出ました。年齢を重ねるとともに気になる「老化」とも関わりますね。

【川田】:私たちが生きる上で、酸素は欠かすことができません。その一部は活性酸素という物質に変化します。活性酸素は細胞内外の情報伝達や免疫などで必要な働きをする一方、反応性が高い物質であるために、過剰になると細胞を傷つけます。これがいわゆる「酸化ストレス」です。この酸化ストレスは、老化を進行させる重大な要因となります。酸化ストレスによって細胞が障害されると、臓器や組織がダメージを受けて、本来の年齢にふさわしい機能を果たせなくなる、つまり老化の加速につながります。

【藤井】:酸化ストレスを抑えるには、どのような手立てがありますか。

【川田】:酸化を抑えるシステムには2つあって、一つは体内で作り出している酵素による防御機構、もう一つが食品などからとるビタミンC、ビタミンE、ファイトケミカルといった抗酸化物質によるものです。最近、老化制御研究において、食品からファイトケミカルをとることによる刺激が体本来の抗酸化システムの働きを高める「ホルミシス作用」に関わっているのではないかという考えが出てきています[4]。有酸素運動をして息をはっはっ、とさせたとき体内で産生される活性酸素が体の防御機能を高めるスイッチになっている、それと同様の働きをファイトケミカルが発揮しているのでは、という考えで、私も注目しています。

【藤井】:大変興味深いですね。さらにもう一つ、近年、老化に関わる因子として「糖化」も話題となっています。

【川田】:糖化とは、体内で糖とたんぱく質が結びつくことによって糖化最終生成物(AGEs)が作られることを言います。空腹時に一度にたくさんの糖質をとる、というような急激に血糖値が上がるような食べ方をすると、糖が体内のあちこちでたんぱく質と結びつき、糖化が進行します。糖化が血管で起こると、動脈硬化を引き起こして心血管疾患などにもつながります。

【藤井】:糖化を抑えるにはどうすればよいでしょうか。

【川田】:糖質のとり過ぎを控えることはもちろんですが、野菜やキノコ、ナッツといった食物繊維の多い食品を食事の最初にとると、糖の吸収が緩やかになり、血糖値の上昇を抑えられます。アーモンドには血糖値上昇の指標を改善する効果も報告されています(下記グラフ)。また、糖化が皮膚に起こると、皮膚の黄ばみや弾力性の低下など見た目の老化も促進しますが、アーモンドの摂取が顔のしわの改善に影響を与える、という研究もあります[5]。

糖尿病予備軍の成人65人を対象に、エネルギーのうち20%をアーモンドから摂取する(アーモンド28gに相当)16週間の試験を行った。アーモンドなしの食事群と比較し、アーモンド摂取群は空腹時のインスリン値が大幅に減少した。(データ:J Am Coll Nutr. 2010 Jun;29(3):189-97.)

【藤井】:アーモンドには、老化を進める「酸化」と「糖化」を抑制する働きが期待できそうです。積極的に取り入れたいですが、先生はどのようなとり方をお薦めになりますか。

【川田】:最近、私は皮ごと食べられるブドウと一緒に食べています。ブドウのみずみずしさでアーモンドのパサつきが和らぎ、風味も豊かになります。オフィスなどでナッツを食べにくい、という人は、液状のアーモンドミルクなら手軽です。アーモンドミルクは、朝食の際にシリアルにかけて食べるとおいしくヘルシーですし、コーヒーに混ぜると香り豊かなフレーバーコーヒーのような味わいを楽しめるので、気に入っています。
 
食は健康的な生き方の原点となります。まず、食習慣の改善からスタートしてみてください。体調が良くなり、気持ちが前向きになってきたら、運動をプラスするとさらにその効果は高まります。おいしいものを頂き、よく動き、幸せ感を感じることが好循環を引き起こしていきますよ。




文/柳本 操 図版作成/新藤由樹(RINTO DESIGN) 構成/横濱 啓子(remix.inc)
[1]N Engl J Med 2013; 369:2001-2011.
[2]Arch Intern Med. 2010 May 10;170(9):821-7.
[3]Nutrients. 2018 Apr; 10(4): 468.
[4]Environ Pollut. 2018 Feb;233:725-734.
[5]Phytother Res. 2019 Dec;33(12):3212-3217.

■川田浩志
東海大学医学部内科教授
米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、現職。副医学部長、医科学長を兼任。血液腫瘍学、再生医学などを専門とする。内科診療とともに、抗加齢医学を応用した健康維持の普及にも力を入れる。日本内科学会、日本血液学会、日本抗加齢医学会などの認定専門医。近著に「世界一効率がいい最高の運動」(かんき出版)など。

■藤井省吾
日経BP総研副所長 兼 メディカル・ヘルス ラボ所長
東京大学大学院農学系研究科修士了、農学修士。医療雑誌「日経メディカル」記者、健康雑誌「日経ヘルス」編集長を経て、健康・医療の最新情報サイト「日経Gooday」を立ち上げ。美容ブーム、朝ショウガブームを創出。18年から日経BP総合研究所副所長兼メディカル・ヘルスラボ所長。