食品で認知機能向上?長年追いかけてきた、グリコーゲンの新しい可能性。

グリコーゲンの新しい可能性

Glicoの企業名の由来にもなっている「グリコーゲン」。この春、その成分の新しい効果として、認知機能への有効性を示す研究論文が「Functional Foods in Health and Disease」という学術誌に掲載されました。その研究に携わったメンバーのひとりが、Glico・健康科学研究所の加藤和子。加藤研究員は入社直後よりグリコーゲンの研究に携わり、メカニズムの解明や論文の執筆に大きな力を発揮しました。そんな彼女の言葉から、Glicoとグリコーゲンの関係、研究者としての仕事、グリコーゲンの新しい可能性を紐解いてみたいと思います!

Glicoとグリコーゲン、いつも二人三脚で。

Glicoとグリコーゲン、その二人三脚の歩みは1922年の創業前からはじまります。創業の前々年である1919年、江崎グリコの創業者である江崎利一はカキの煮汁に多量のグリコーゲンが含まれることを知り、グリコーゲンを活用した食品の商品化に着手したことが、Glico創業のきっかけになりました。ところで、江崎利一が「食品による国民の体位向上」を強く願うようになった理由のひとつに、チフスにかかった息子に、グリコーゲンを与えることで体力を取り戻したことがあるのは有名なエピソード。そもそも、グリコーゲンとは私たちの体にどのような働きをしてくれるものなのでしょうか。そんな問いに対して「グリコーゲンにはエネルギー貯蔵物質としての役割があるんです」と語るのは、Glico健康科学研究所に所属する加藤研究員です。

Glico健康科学研究所に所属する加藤研究員

「人間は食べ物から取り入れたエネルギーをグリコーゲンの形にして肝臓や筋肉に一時的に蓄えます。エネルギーを貯める手段としては他に、脂肪とアミノ酸という形もありますが、これらは再びエネルギーに姿を変えるときに複雑なステップが必要。グリコーゲンはこれらに比べてエネルギーに変わるスピードが早く、エネルギー源としてとても優秀なんです。ちなみにグリコーゲンは母乳にも含まれていてることが分かっています。」

肝臓や筋肉

脳やカラダを効率的に働かせるのに欠かせないグリコーゲン。その研究において Glicoは第一線をずっと走りつづけてきました。しかし、それほど重要な栄養素なら、もっと多くのメーカーや研究所が研究に取り組んでいてもおかしくないのでは?そんな疑問が頭をもたげます。


「大学の研究室などでは研究されていますが、私たちのように大々的に取り組んでいる企業は確かに少ないかもしれませんね。その要因は大きく分けて2つあると思います。ひとつは、Glicoが酵素を用いてグリコーゲンを合成する技術を持っているということ。自然界から取り出したグリコーゲンは非常に高価ですし、品質にばらつきもあります。しかし、私たちは不純物が少なく、品質が安定したグリコーゲンを大量に合成できる。これは実験環境として、とても有利です。そしてもうひとつが、その歴史。これまでにも、免疫賦活作用に関する研究、抗肥満効果に関する研究、骨代謝に関する研究など、グリコーゲンにまつわるさまざまな研究をしてきました。そのノウハウが豊富にあることも、とても大きな差だと思いますね」

おいしさと健康をつなぐために。

そんなグリコーゲンをはじめ、食と健康に関する幅広い研究をGlicoの中で行っているのが、加藤研究員も所属する「健康科学研究所」。その現場ではどんな研究が、どのように行われているのでしょう。

健康科学研究所

「基本的に研究所では、研究員一人ひとりが自らテーマを選び、それぞれが立てた計画にのっとり研究を進めています。もちろん企業の中にある研究所なので、商品開発や会社の利益に貢献することも意識しなくてはいけません」


そう語ったあと、加藤研究員は「でも……」とつなげました。


「目先の結果ばかりを求められるわけではないんです。まだ誰も知らないこと、答えの出ていないことに取り組むわけですから、失敗することだってあります。期待していたような結果が得られないまま終えなければいけないこともあります。ですが、健康科学研究所では、失敗という結果だけではなく、その過程も含めてちゃんと評価をしてもらえます。そうした空気、環境の中で働けるのは、非常にありがたく感じています。」




加藤研究員が現在関わるのは、入社直後から携わってきたグリコーゲン、それにアーモンド、そして、母乳の基礎研究。研究員の仕事というと実験室で試験管とにらめっこ……を、ついイメージしますが、実際はデスクワークも多いと言います。

「研究テーマが決まったからといって、いきなり実験をはじめるわけではありません。まずは海外の論文を原文で読み漁り、試験計画を練ります。原文で読むと言うとまるで外国語を自在に操れるように思われるかもしれませんが、英語はそこまで得意ではありません(笑)。出てくる単語も自分の研究範囲のものが中心ですから、日本語の専門書を読むのとそれほど変わりはありません。試験計画をしっかりと立てることは、失敗のリスクを減らすためにもとても大切な作業です。そのためにも過去の論文を精査することは欠かせません」

グリコーゲンの認知機能への有効性を、はじめて確認。

加藤研究員とグリコーゲンの出会いは入社直後、今から約7年前のことでした。当時、研究所内では、グリコーゲンが認知機能へ有効に働くという仮説が立てられており、一部ではすでに実験が開始されていました。そこに新たに加わったのが大学院を卒業したばかりであった加藤研究員。彼女には「グリコーゲンが認知機能に有効に働くメカニズムを解明すること」、そして「論文として発表すること」というミッションが与えられました。「グリコーゲンは、Glicoの企業名になるほど関わりが深く、その研究には多くの先輩方の努力が詰まっています。そこに自分が携われるのは幸せでした」と振り返ります。

とても大きな一歩だと語る加藤研究員

「あれからもう何年も経ちますが、ようやく論文としてまとめることができたことを嬉しく思います。今回の試験ではグリコーゲンを含んだものと含んでいないもの、それぞれの飲料を4週間飲んでいただき、長期記憶力に差が出るのかを調べました。結果的にグリコーゲンを摂取していない方に比べ、摂取した方は長期記憶力が向上することが判明。将来的には認知機能向上効果を訴求した機能性表示食品の原料として使用できるのではないかと考えています」

認知機能向上に役立つ栄養素はDHAなどが有名ですが、市場ではサプリメントで摂取するように開発されるケースがほとんど。今回、グリコーゲンにその機能があることがわかったのは、とても大きな一歩だと加藤研究員は語ります。

加藤研究員

「グリコーゲンそのものに味はなく、水にも溶けやすいという性質があります。ということは、既存のお菓子、お料理、飲み物の中に取り入れやすく、サプリメントを服用するよりももっと簡単に認知機能の向上を期待できるということ。また、グリコーゲンはもともと人間の体内にある成分ですから、摂取することで害もありません。近年、老化に伴う認知機能低下は大きな社会問題になっています。その問題の解決に少しでも役立てられたら、研究者としてこれ以上の喜びはありません」

高齢者はもちろん、幅広い世代の健康づくりへ。

厚生労働省によれば認知機能とは記憶のみならず「判断・計算・理解・学習・思考・言語などを含む脳の高次の機能」と定義されています。つまり、認知機能への有効性は高齢者だけでなく、若い世代にとっても嬉しいニュースといってもいいのかもしれません。加藤研究員は、最後にこのようにも語りました。


「今回の新型コロナウィルス(COVID-19)流行に際して、研究環境も大きな変化を求められました。それ以前からGlico社内ではテレワーク・オンライン化が推進されていたこともあり、大きな混乱はありませんでしたが、それでも実験室に入れる時間を制限されたり、研究員同士で対面でのコミュニケーションが減ったりすることは大きなストレスに。他人と話すこと、外に出て体を動かすことは、脳にいい刺激を与えてくれていた、ということに改めて気づかされました。今回わかったグリコーゲンの機能は、そうしたシーンでも、きっと役立ってくれるはずです」

Glicoの健康科学研究所

これまでに報告されてきた抗肥満効果、免疫賦活効果、抗酸化力による大腸炎軽減効果に加えて、認知機能の向上効果も見出されたグリコーゲン。超高齢化、そしてストレスも多い社会で生きる私たちにとって、ますます心強い存在になってくれそうですね。毎日の「おいしさ」から「健康づくり」を応援する、Glicoと健康科学研究所に、これからもどうぞご期待ください!

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