災害対策コラム
日本災害食学会顧問 甲南女子大学名誉教授 奥田 和子氏

日本災害食学会顧問
甲南女子大学名誉教授

奥田和子 氏

テーマ: 災害備蓄食のあり方について 第3回(全3回)

2016年4月の熊本地震から貴重な教訓を学ぶ

1.避難所へ行くときは「食料と飲み物を持参するという災害文化」の発信・・・自助

熊本地震では、発災2日目に避難者に対して「各自食料と飲み物を持参するように」という指示が約半数近い自治体から出ました。再度の強震と度重なる余震におびえた市民が避難所に押し寄せてきたからです。
これは、「避難所に行くと食事がもらえる」という従来の常識がくつがえったことを意味します。受け身の姿勢ではなく、“自助”の出番が明確になった事例です。これを文化として定着させることを提案します。

2.被災後早期の炊き出しは実際には困難なことも・・・自助、共助

繰り返す余震のなかでは、火を起こしての炊き出しも困難です。
また、ライフラインが停止した状態では衛生面の不安もぬぐいきれません。
発災後の間もない時期は、炊き出しに過度に依存しないで、自分で備蓄したものでしのぐ姿勢も必要です。

3.救援物資に依存しない災害文化の構築を・・・共助、公助

熊本地震では、発災2日目に避難者に対して「各自食料と飲み物を持参するように」という指示が約半数近い自治体から出ました。再度の強震と度重なる余震におびえた市民が避難所に押し寄せてきたからです。
これは、「避難所に行くと食事がもらえる」という従来の常識がくつがえったことを意味します。受け身の姿勢ではなく、“自助”の出番が明確になった事例です。これを文化として定着させることを提案します。

4.備蓄食料は量より質の時代・・・自助、共助

災害の被害は「こころとからだ」の両面にダメージを与えます。これを緩和するためには、ぜひとも癒しが必要です。
あなたの会社の備蓄食品はいかがでしょうか?被災者が食べてホッとするものをご準備されていますか?
好まないために使用されず、やがて廃棄処分されれば、廃棄費用がかかるだけでなく、地球の限られた資源の無駄にもつながります。多くの会社がISO14001の環境マネジメントシステムを規定している中、環境保全のためにも災害備蓄食にも質の吟味は欠かせません。
また、もともと災害弱者やアレルギーなどの健康弱者用に備蓄がないのは問題ですので、ぜひ備蓄をしてほしいものです。ついでながら、飲み物の備蓄が少ないのも残念です。

5.米を備蓄食糧とすることは、緊急性を求める災害時には不適切・・・公助

独自にヒアリング調査した結果、備蓄食糧に占める米の比率が9割を超える県もありました。 米は煮炊きが必要で、「即食性」を欠き初期対応に不向きなため、発災直後の混乱を招く一因にもなります。すぐに食べられるものの備えが必要です。

6.災害救助法の適応により支給される弁当(基本的には全被災者1人当たり1,110円)を配給する際、地元の活性化、地産地消を視野に入れている。

大変遅い時期に支給されているが、市内の弁当屋、職業組合、地元の商工会、地域物産協会など、地元が頑張りをみせた点は評価し、学びたい。

7.災害弱者への公正性の配慮が求められる・・・共助、公助

先の熊本地震では、指定避難所以外の場所や車中泊などで長期間過ごした避難者も多く見られました。そして、こうした人たちは食事の配給などに不安感を抱いていました。指定避難所に行きたくても行けない人もいます。こうした災害弱者がむしろ優先的に処遇される社会を目指さなければなりません。
災害を契機にしてその先にあるのは、日常の負の部分が助長されるか、それとも大幅に改善是正されるかのどちらかです。災害を契機に、被害を最小限にとどめて命を守り、円滑な健康管理ができる社会を目指したいものです。

最後に

被災してもいち早く復興に向かうために、災害食には食べ慣れた食材を使用し、健康維持、元気回復に寄与しなければなりません。この資料が日頃から災害に備える心構えの一助になれば幸いです。